いくらコンテナ

小学生のASD(知的の遅れなし)の息子とADHD母との備忘録。怒らない育児に忍耐を強いられるものの、度々決壊してはホワホワ無害系の息子に絆されて怒る気を失くす毎日を綴ります。

ADHDの親を持つということ

先日、祖父が肺炎で亡くなった。

元々、前立腺がんが再発して転移していたこともあり、遅かれ早かれと身内で話してはいたものの、体力もないこともあって危篤状態もなくあっという間に息を引き取ってしまった。

火葬とお寺さんの読経のみの所謂家族葬だったが、若い頃の祖父の破天荒だった性格を考えると、ちゃんと身内に見守られながらの葬儀だったのだから、それでも十分立派だったと言えるだろう。

 

祖父は所謂クソジジイというやつで、老衰して足腰が立たなくなるまで家族を振り回し続けた。

頭に血が登りやすく、ケンカをして仕事を止めてフラフラしたり、祖母や子供に手を上げたり。

目先の欲に囚われて、後先考えず無駄遣いをして生活できなくなったり。

かと思えば、あちこちからたくさん物を貰ってきて足の踏み場もない状態にしたり。

お喋りが大好きでずーっと喋ってるかと思えば、突然不機嫌になって喋らなくなったり。

本能に衝き動かされるがままに生きているような人だった。

まるでADHDのようだ。

いや、まるでというより祖父こそが多動性・衝動性優勢のADHDだろう。

 

祖父がADHDだということは自分がADHDだと診断されてから分かったことだが、よくあんなものを放置して好き放題やらせたものだ。

時代が時代なので、本人も障害を無自覚なまま誰にも縛られることなく、といったところだろうか。

そんな祖父だから、年を重ねるごとに多少はおとなしくなっていったとはいえ、老衰して寝たきりになるまで家族を振り回した。

せめてもの救いは、多弁ゆえによく喋りよく笑う人好きのするキャラクターから、どこに行っても誰かと仲良くなるところだろうか。

 

そんな聞く耳なしのロクでなしによく耐え忍んだものだと、私は子供ながら祖母に対して尊敬の意を抱きつつ幼少期を過ごした。

しかし、よくよく考えるとこの祖母も怪しいのだ。

物が捨てられない。

掃除が下手。

面倒なことは人にやらせるか、先送りしてギリギリになって慌てる。

金のやり繰りが下手。

一言多いが、肝心な事は言わない。

感情のコントロールができない。

……あれこれってADHDじゃね?と疑念を抱いたのはつい最近の話。

 

ADHDの遺伝率は推計約75%と報告されているので、祖父母の遺伝子から息子、その息子の娘の私に引き継がれても何ら疑う余地はない。

疑うどころか、実父、その弟達である叔父3人、そして私、全てにADHDの素養があるので、うちの一家でほぼほぼ立証しているのではなかろうか。

(残念な方向のエリート一家だなぁ)

 

ここで問題なのは、私がそんな祖父母に育てられたということ。

 

ADHDは脳の機能障害からと言われているが、他にも重要視されているのが〈家族性〉とその〈環境〉。

要は訓練すれば幾ばくかは緩和するけど、ADHDのとっ散らかった生活してる中で育てば、そのまま成長して大人のADHDが完成しちゃうよって話。

何の工夫もしないどころか、ADHDADHDをこき下ろしながら育てたのだから、私という自己肯定感の低〜い無能のADHDが完成したのだ。

 

今となっては、祖父母が本当にADHDなのかは確かめようがない。

しかし、私が成長に伴いながら経験し続けた苦労や悲しみを考えると、どうしてもやりきれない。

なぜ、優しく見守りつつ、伸び伸びと育ててくれなかったのか。

ドジだのグズだの言うばかりで、上手くできても褒めもせずにいたのに、あんたらの遺伝子と怠慢でドジでグズのまま大人になって、それで苦労してるのは私だけじゃないかと。

 

大人になって社会で苦労をし、

それが原因で病気になって苦労をし。

育児も苦労が絶えず、

ADHDの診断が下りれば息子への遺伝の心配をし、

もし息子がそうでも困らないように工夫をし、

私が原因で息子が抱える不安を考えれば考えるほど胸が締め付けられ、

それでも息子には伸び伸びと生きて欲しいと願えば願うほど、

祖父母に対して怒りや憎しみの感情が増すのだ。

なぜ私にはしてくれなかったのだと。

 

過ぎてしまったことは仕方ないと分かっていても、その思いが消せないのが心の傷で、その心の傷があってこそ今の私は息子に愛を注いでいられる。

息子に愛情を持って接し、思いやりを持って育てれば育てるほど苦しいのだ。

 

今それを止めれば苦しみから逃れられるかもしれないけれど、将来息子から恨まれるだろうから止めておく。

人を恨みながら生きるのは結構しんどいことだしね。

 

子供に同じ思いをさせたくないのが、親心ってもんさ。